(※これは2006年10月の記事をまとめたものです)

白山通りから見た後楽園教室

スクールETCが文京の地に開塾して、27年目になります。

 近隣に国立や私立の学校が多い土地柄もあって、国立附属3校(筑波、お茶の水、竹早)や、私立学校に通うお子様をお預かりしてきました。

 今春開校した、小石川中等教育学校などの都立中高一貫校を志望する区立小学生も増えてきました。小学生を中心に高校受験の中学生(集団クラス授業・個別指導)、そして高校生も個人授業を受けに通ってきています。

 本郷のこの地に塾舎を開いたのは昨年の春、それまでは茗荷谷や小石川2丁目に教室がありました。柳町商店街の土地再開発計画に基づく立ち退きがあって、本郷に移転して来たわけです。

 ETC代表の若泉は、都内の私立小学校教諭を務めた後、日能研という中学受験大手塾に勤め、結婚して最初に住んだ小石川2丁目でスクールETCを開くことになりました。

 子どもは二人いますが、妻もフルタイムで働いていたので、二人とも0歳児保育から始めています。なかよし保育園、慈愛会保育園、本郷保育園、柳町小学校、窪町小学校を経て、中学受験をしました。仕事柄、午前中の時間が比較的空いているので保育園の送りは私がやり、夕方は妻が迎えに行きました。保育園の保護者の方々と、様々なイベントを行なったりもしました。

 子どもが胎児のころから幼児のころにかけて気づいたことがあります。妻のお腹に子どもがいた頃、街中を歩いていると、それまで気にも留めていなかったのに、妊婦さんがけっこう街を歩いていることに気がついたりしました。そして子どもが生まれて、まだ首が据わらないうち、ベビーカーに乗せたり、おぶったり、背負子に乗せたりして歩いていると、同じように赤ちゃん連れの親子が街の中にはたくさんいるということに気がつきました。それまで、独身の頃はもちろん、結婚してまだ子供がいないときも、妊婦や親子連れは視野に入ってきませんでした。自分が子どもを持ってみると、そういう人たちの様子が目に飛び込んでくるのです。

塾長の個別指導のようす

 これはいったい何なのでしょうか。
 自分が興味のない、関心の薄い分野に関する情報については、たとえ自分の身近なところに存在していても気がつかないものなのです。それが、我が子が生まれたということで、いったん関心を持つと、子どもを取り巻くさまざまな情報が認識されるようになる、そういう体験をしているのです。

 これを子どもの学習に関連して考えてみましょう。子どもたちは、普段学校やその他の場所で、テレビを見たり雑誌を読んだり、また人と話をしたり話を聞いたりしている場面で、特に関心がなくても、たくさんの情報に触れ、知識を無意識に頭に入れているのです。ところが、いったん目的をもって意識して学習に関心が向けば、知識を獲得し運用しようとする力が高まってくることになります。意識下にある様々な情報を結びつける動機付けやきっかけを与えることが重要なわけです。

 更に大きくなった子どもを保育園に連れて行ったり、他の園児と一緒に出歩いて遊んだりしていて、気付いたことがありました。年長ぐらいまでの幼児のスピード感は、60過ぎの高齢者と似ている、ということです。

 ディズニーランドに行ったときのことです。スペースマウンテンという、暗闇の中を猛スピードで駆け抜けるあのジェットコースターに6歳になったばかりの息子と乗ったのですが、大変怖がられました。まだ元気いっぱいの若い父や母は、遊園地に行けば、ジェットコースターなどスリルとスピード感のあるものに乗りたくなります。しかし身体が未発達な幼児期の子どもは、汽車ポッポのような一定の範囲をゆっくり動く乗り物などは喜んでも、速過ぎる乗り物は怖がるものです。その点で、若い頃の体力が望めなくなった、おじいちゃんおばあちゃんのリズムやスピードと合うわけです。だから、幼児期の子どもが高齢者と過ごすのは、行動のリズムや速度が合っていて都合がいいのだといえます。

クラス授業のようす

 高齢者は身のこなしや頭の働きの衰えを自覚していますから無茶なことはしませんが、日々成長する幼児の場合は、眼に入るもの、触れるもの、これをどんどん吸収し真似ていきます。その為に幼児には様々なスピード感が周囲にあったほうがいいともいえます。いろいろなリズムや行動様式に、子どもが慣れていく意義もあります。しかし、子どもの発達段階に見合わないスピードや作業量を過度に与えると、そのギャップが大きいために、子どもは拒絶したり無関心になったりしますから気をつけなければなりません。

 逆に、威圧感や恐怖心を抱かせない範囲で、ある一定のスピードやリズムが周囲にあることは子どもの喜び、快感でもあるのです。

 子どもたちと触れ合うのは、圧倒的に母親のほうが多いわけですが、保育園等でいろいろな母親と接していますと、母親のリズムがそれぞれ違うことに気がつきます。何ともゆったりした、落ち着いた話し方、動き方の母親たちの子どもは、大抵ゆったりとした感じにはなります。けれども、てきぱき、さっさと行動する母親の場合は、必ずしも、子どもがそうなるわけではありません。これは、母親が子どもの行動を待てず物事を片付けてしまうと、子どもは何もしなくとも欲求が次々と満たされ、自分で動く必要が無くなってしまうことがあるからです。

 他方、肝心かなめの部分の行動は子どもに任せつつ、状況によって細やかに対処している母親の場合は、子どもがゆったりとした自分流の行動を維持しながらも、時と場合によっては、一定のリズムとスピードのある行動が自然と身についてくるのです。

かつての後楽園教室入り口付近

 このように、親が子どもに接する行動の違いが、実は小学校以降の学力形成に少なからず、影響を与えることがあります。

周囲に小さい子が少ないこの少子高齢化時代、どのように子どもと付き合っていけばいいのかわからない、という親も増えてきたように思います。   

 私は、自分の子育てや、多くの児童・生徒たちの学力向上に関わってきた経験から、様々な生活・学習状況にあるお子さまの保護者の皆様のお悩みに応え、多少なりとお力になってお役にたちたいと考えています。